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八重洲の再開発 — 「誰が・どんな構造で」作っているか(施工JVと保留床スキーム)

場作り・コミュニティ
東京駅八重洲口の5大再開発の施工JV体制と、デベロッパー・ゼネコン・組合の利益構造・契約方式を一次情報で整理した調査資料。組合施行の権利変換+保留床スキームと、三菱地所の個人施行TOKYO TORCHの対比。
作者

Hiroaki Yamato

公開

2026年10月18日

これは調査レポート(私向け資料の公開版)です。図版つきPDF(A4横・3ページ)は こちら。数値・体制情報は各社IR・日経xTECH・東京都都市整備局・中央区・UR都市機構の一次情報に基づきます。

問い:八重洲口の巨大再開発は、誰が・どういうお金の構造で建てているのか

東京駅八重洲口では現在、北側の日本橋川沿いから南の京橋方向まで、5つの大規模再開発が同時進行しています。延床20万〜75万㎡級のプロジェクト群の「施工JV体制」と「デベロッパー・ゼネコン・再開発組合の利益構造」を一次情報で整理しました。

プロジェクト横断比較

プロジェクト 施行・主体 参加組合員/権利者 設計 施工 規模 工期
東京ミッドタウン八重洲(二丁目北) 組合施行 三井不動産(主導)ほか 日本設計/マスター:Pickard Chilton 竹中工務店(単独) 延床29.0万㎡・240m 2018.12着→2023.3開業
八重洲二丁目中地区 組合施行 鹿島・住友不・UR・阪急阪神不・ヒューリック・三井不(6社) 日建設計(基本設計・監修・再開発コンサル) 鹿島建設(単独) 延床38.9万㎡・227m(駅前3地区最大) 2024.8着→2029.1
TOFROM YAESU TOWER(一丁目東B) 組合施行 東京建物(地権者兼特定業務代行)ほか 日本設計→大林組 大林組・大成建設 JV 延床22.5万㎡・250m 2021.10着→2026.2竣工済
八重洲一丁目北地区 組合施行 東京建物・東京ガス不・明治安田・大成建設 日本設計(低層外装監修:Laguarda.Low) 大成建設(単独) 南街区延床18.6万㎡・事業費2,352億円 2024.11着→29〜32年度
TOKYO TORCH(常盤橋地区) 三菱地所 個人施行 三菱地所・東京センチュリー・都下水道局・大和証券G・三越伊勢丹・東電PG・大手町開発・UR 三菱地所設計(全棟一貫) 常常盤橋T=戸田・Torch T=清水・変電所棟=戸田清水・下水道局棟=三井住友 街区延床74万㎡・Torch 62F 385m(日本一) Torch 2023.9着→2028.3

※参考:南側の隣接開発「京橋エドグラン」(京急電鉄・東京建物)とは地下通路で接続し、東京駅〜京橋駅の回遊動線を構成。

お金の構造:権利変換+保留床スキーム

第1種市街地再開発事業(組合施行)はこう回ります:

  1. 地権者:施行前の土地・建物の権利を、原則等価で新ビルの「権利床」に交換(都市再開発法)。
  2. 組合(施行者):事業費=調査設計+除去+補償+工事+利息・事務費。国・自治体の補助金や公共施設管理者負担金も充当。
  3. 保留床:高度利用で生まれた余剰床を参加組合員(デベロッパー・ゼネコン等)が買取・賃借。その処分金が事業費の財布。
  4. 完成後:権利床=地権者の資産、保留床=買い手のオフィス賃貸・分譲・売却益。バスターミナル(3地区計20バース)・地下歩道網などの公共貢献は容積率緩和(国家戦略特区)と引き換え。

プレイヤー別の儲け方とリスク

  • デベロッパー(三井不・東京建物・住友不ほか):保留床を買取→オフィス賃貸・商業PM・ホテル誘致(ブルガリ等)。自社用地なしで都心一等地の床を長期保有できるのが動機。リスクは権利変換まで5〜7年の長期資金と保留床の処分リスク。
  • ゼネコン(鹿島・大成・大林・竹中・清水…):①請負工事利益(売上の5〜8%規模)+実施設計も握るので施工性を設計に織り込める。②参加組合員時は保留床の賃貸収入・売却益(鹿島@二丁目中、大成@一丁目北が典型)=「床を買って工事を取る」保留床付き受注。リスクは床保有中の賃料変動・事故責任(TOFROMは2023/9鉄骨崩落死亡事故で一時中断)。
  • 組合/地権者・行政:地権者は老朽ビル→新耐震の権利床に等価交換。行政は道路・広場・バスターミナル・地下歩道網を民間資金で実現し容積率緩和を対価に。URは参加組合員として調整役に。

契約方式の対比

  • 組合施行型(八重洲の標準):基本設計・監修=組織設計事務所(日本設計・日建設計)、実施設計・施工=ゼネコンの分離ハイブリッド。海外式の設計完了後入札(DBB)ではなく、施工者が設計後半を担う実質デザインビルド(ECI型)。地権者合意で合法性と資金を確保する代わりに、合意に年単位の時間がかかる。
  • 個人施行型(TOKYO TORCH=三菱地所):三菱地所自身が権利者(連鎖型開発の自社地)で組合を作らず単独施行。設計は三菱地所設計が全棟一貫、施工は棟別指名(戸田・清水・三井住友)で工期・リスクを自社コントロール。意思決定は速いが、土地を自社で持てる大手にしか使えない方式。
  • 東京建物の「特定業務代行」(TOFROM)のように、組合の実務を代行し保留床処分に責任を持つ中間型もある。

出典(一次情報)

  1. 三井不動産 IR「八重洲二丁目中地区」着工(2024-08-26)/「東京ミッドタウン八重洲」名称決定(2021-04-08)— mitsuifudosan.co.jp
  2. 東京建物 IR「TOFROM YAESU TOWER」竣工(2026-03)— tatemono.com
  3. 三菱地所 IR「Torch Tower」着工(2023-09-27)— mec.co.jp
  4. 日経xTECH「八重洲2丁目中地区着工」「八重洲1丁目北地区起工」「トーチタワー着工」各記事 — xtech.nikkei.com
  5. 東京都都市整備局「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」— toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  6. UR都市機構「市街地再開発事業」(権利変換・資金計画・民間参画3方式)— ur-net.go.jp
  7. 国交省「権利床及び保留床の価格設定」— mlit.go.jp