Menu / メニュー
ページ一覧

豪雨・土砂災害の被災地で建物の建築年を分析する — PLATEAU建物データで危険区域の内と外を比較

研究
2014年広島土砂災害・2018年西日本豪雨の被災4市(広島・呉・宇和島・岡山)について、PLATEAUの建物単位データから建築年を抽出し、土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域の内と外で旧耐震・木造建物の割合を比較した分析レポート。
作者

Hiroaki Yamato

公開

2026年10月13日

データの範囲:PLATEAUの建物属性は調査した年の時点のものです(「今建っている建物」ではありません)。yearOfConstruction=0001 は「不明」として除外しています。災害年より後に建った建物を「再建」とは言い切っていません。被害の数字は内閣府・消防庁・自治体の出典URL付きのものだけを使っています。

まとめ(結論)

土砂災害警戒区域は4市すべてで、区域外より旧耐震・木造建物が多い。特別警戒区域で最大:岡山58.2%・呉56.4%・宇和島54.3%・広島30.9%(区域外は38.8%・42.6%・38.2%・20.7%)。山すそに張り付く古い集落が警戒区域の指定と一致している構図です。

洪水浸水想定区域(L2)は市で逆転する。広島+12.6pt・宇和島+10.7ptと古い建物が浸水想定内に集中する一方、呉-6.4pt・岡山-3.6ptは区域外より低い(浸水想定が平野部ほぼ全域を覆うため相対差が出にくい。岡山では全棟の81%がL2内)。

分析レポート全体図

1. 対象と被害

市 PLATEAUコード 災害 被害(出典数字)
広島市 34100 2014年8月土砂災害・2018年7月西日本豪雨 2014年:死者74(安佐南68・安佐北6)、全壊133・半壊122(消防庁第39報)。2018年:死者28・全壊111・半壊358(広島市)
呉市 34202 2018年7月西日本豪雨 死者30・家屋被害3,243棟(安浦991・天応598など)(呉市復興メモリアル)
宇和島市 38203 2018年7月西日本豪雨(吉田町など) 死者13(直接11・関連2)(宇和島市)
岡山市 33100 2018年7月西日本豪雨 全壊1・半壊1、床上3,256・床下4,389(広報第96報)。砂川破堤=東区東平島・南古都、笹ヶ瀬川・足守川の内水=北区津高・津島・玉柏・御津国ヶ原

倉敷市(真備地区)はPLATEAUデータに建築年の項目自体がなく対象外です。

2. 建築年がわかる割合(判明率)

市 全棟数 建築年がわかる棟 判明率 調査年(surveyYear) 版
広島市 369,815 61,408 16.6% 2022 2024年版
呉市 118,290 42,253 35.7% 2017(災害の前年) 2020年版
宇和島市 42,404 20,484 48.3% 2024 2025年版
岡山市 520,224 273,316 52.5% 2022 2024年版

重要な偏り2点:

  • 広島市の判明棟は市街地南部に集中しており、被災した安佐南・安佐北の4地区(八木・緑井・山本・可部東)では判明棟がほぼ0。地区別の年別推移は作れなかったため「分析不可」として報告しています。
  • 呉市の調査年は2017年=災害の前年の台帳。災害後の再建状況との比較には使えません。

3. 年代構成

災害年より後に建った棟の割合(判明棟ベース):広島5.4%(2018〜)、呉2.3%、宇和島4.1%、岡山2.7%。

市 〜1980(旧耐震) 1981-2000 2001-災害年 災害年より後
広島市 28.0% 40.8% 25.8% 5.4%
呉市 44.2% 35.1% 18.4% 2.3%
宇和島市 44.6% 35.5% 15.7% 4.1%
岡山市 36.0% 38.3% 23.0% 2.7%

旧耐震の木造(buildingStructureType=601)棟数:広島9,500・呉13,688・宇和島7,343・岡山77,156。

年代構成 旧耐震・木造の構成

4. 区域の内と外の比較(中心の分析)

建物のuro:bldgDisasterRiskAttribute属性(土砂災害=LandSlideRiskAttribute、洪水=RiverFloodingRiskAttribute)を使い、建物単位で区域内外を判定しました(ポリゴンの重ね合わせは不使用)。

市 区域 旧耐震の割合 木造の割合 n(判明棟)
広島市 土砂災害警戒 24.2% — 13,042
特別警戒 30.9% — 1,632
洪水L2 33.3% — 33,603
区域外 20.7% — 16,177
呉市 土砂災害警戒 47.7% — 20,891
特別警戒 56.4% — 2,842
洪水L2 36.2% — 6,624
区域外 42.6% — 15,810
宇和島市 土砂災害警戒 47.9% — 8,176
特別警戒 54.3% — 2,186
洪水L2 48.9% — 7,105
区域外 38.2% — 6,863
岡山市 土砂災害警戒 45.8% — 15,419
特別警戒 58.2% — 2,012
洪水L2 35.2% — 234,503
区域外 38.8% — 30,167

区域内外の比較

読み方:土砂災害警戒区域では4市すべてで旧耐震・木造が区域外を上回る。洪水浸水想定は都市構造で逆転——広島・宇和島では浸水想定内に古い市街地が集中する一方、呉・岡山では浸水想定が平野全域をカバーするため区域外の方が旧耐震率が高い。

5. 被害地区別の災害後の建築

出典のある地区(呉=安浦・天応、宇和島=吉田町・立野・白浦・玉津、岡山=東平島・南古都・津高・津島・玉柏・御津国ヶ原)で、災害年(2018)より後に建った棟を数えました。

市 地区 地区内の棟数 判明棟 判明率
呉 安浦 268 21 7.8%
呉 天応 1,412 36 2.5%
宇和島 吉田町 4,221 149 3.5%
宇和島 立野・白浦・玉津 2,241 90 4.0%
岡山 東平島・南古都 3,121 28 0.9%
岡山 津高・津島 6,041 122 2.0%
岡山 玉柏・御津国ヶ原 1,731 12 0.7%
広島 安佐南・安佐北4地区 — ほぼ0 分析不可

地区レベルでは判明率が全棟平均を大きく下回り、年別推移としては数字を出せる状態ではありません。ここは「判明した範囲での計数」として扱います。

6. 限界

  • 属性は調査年時点の台帳。呉は2017=災害前年のため「災害前との比較」しかできません
  • 判明棟の空間分布に偏りがある市(特に広島)は全市傾向の代表ではありません
  • 災害後の建築は「再建」と断定できません(推定)

7. データと再現